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■アイリーン姫の場合


「あ……ちょっとちょっと。ね、クレスト。こっち来て、こっち」

 俺が高く響く透き通った声に呼び止められたのは、ちょうど中庭の見回りを終えて城内に入った時だった。
 凛とした高い声はひどく特徴的で、誰に呼び止められたのか、聞きなれた俺にはすぐに分かってしまう。
 俺は顔だけそちらに向けて、声の主……アイリーンに目配せした。

「……アイリーン姫。いかがなさいましたか?」
「こっちに来てってば。ほらほらッ! あっち行くよッ!」

 俺が周りを気遣って『姫』とつけているにも関わらず、アイリーンは俺の腕を強引に掴むと、そのままぐいぐいと引っ張る。

「あ、あの、私にはまだ仕事が……」
「ちょっとくらいいいじゃないッ! お姫様の言うことに逆らうつもりッ!?」

 全く、相変わらず強引な姫様だ……
 俺は密かに溜め息をつきながら、アイリーンにぐいぐいと引っ張られていった。

 アイリーンに引っ張ってこられたのは適当な人気のない部屋だった。
 後ろ手にドアを閉めながらアイリーンが俺に微笑みかけてくる。
 こう言うときのアイリーンは決まってとんでもないことをする。俺はそれを直感的に感じ取っていた。

「ね……今夜の儀式ってさ、相手は決まってるの? お姉様かプリシラに頼んじゃった?」
「は? い、いやその……まだ、だけど」
「じゃあ……今夜の儀式、私にやらせてよ。いいでしょ、ね?」
「……っと、いきなりそんなこと言われても……こっちにも心の準備ってもんが……」

 アイリーンに突拍子も無いことを言われるのは慣れているつもりだが、どうも儀式が絡むとうろたえてしまう。
 ひょんなことから俺の中に入り込んでしまった魂を封印する為の、姫様との儀式……
 それはつまるところ性魔術というヤツで、内容といえばいやらしいことをして俺の身体から邪気を抜くことであった。
 邪気と一緒に抜かれるのは、俺自身の精気……まぁつまるところ、姫様にヌいてもらうってことだった。

「ねぇ、いいの? いやなの? どっち?」

 転がるような声と共に、アイリーンが俺にしなだれかかってくる。
 柔らかい胸の膨らみが、腕に当たって心地よい。
 ぽよんとした胸の感触に、俺は高鳴る胸を抑えつつ、軽く頷いた。

「わ、分かったよ。その……今日の儀式は……アイリーンにお願いするよ」
「やったぁッ! よかったぁ、いやって言われたらどうしようかって思ったの……あははッ、楽しみだなぁっ」

 アイリーンが嬉しがるその顔には、ほんの少し朱が注しているように見えた。

「……お前さ、儀式の内容のこと、分かって言ってるのか?」
「そんなことはいいのッ! とにかくッ、今日は私が相手してあげるんだから、光栄に思いなさいよねっ」

 そう言って嬉しそうにはしゃぐアイリーンの姿に、俺は相手が姫とか、自分の中の凶王の魂とか、そういうことを考えることがバカバカしいような気がしていた。

 そして夜……
 俺の部屋に、アイリーンの白くしなやかな裸体が、ぼんやりと薄明かりの中で浮かんでいる。
 それは、ほとんど幻想的と言ってもいいほどの美しさで、俺の目は釘付けになってしまう。

「あ……あんたねッ! いくら私が魅力的だからって、ジロジロ見すぎよッ! 恥ずかしいじゃないの、バカ!」
「ご、ごめん……」

 俺の刺すような視線に、アイリーンは恥ずかしそうに身体をよじる。
 ……アイリーンは、普段の活発な姿が目立つせいであまり意識されないことが多いが、実はひどくしなやかで女性的な身体をしている。
 白く滑らかな肌は艶やかで、胸のボリュームにしたって、フォル様に及ばないまでもとても大きい方だと思う。
 大きめの乳房はちょっと動いただけでふるんと揺れるやわらかさだ。先端で控えめにピンと立つ乳首は綺麗なピンク色をしている。
 アイリーンは、ぜい肉の無いすっきりとした肢体をしていながら、バストやヒップはたっぷりとしたボリュームで申し分が無い。

「……で? 今日はどうして欲しいの? ほら、遠慮しないで言ってよっ」

 無言になった俺に、恥らったような赤みを頬に浮かべながらアイリーンが尋ねる。
 俺は僅かに潤みを帯び始めているように見えるアイリーンの瞳を真っ直ぐ見つめながら、軽く頷いた。

 さて、どうやってヌいてもらおうか……